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遺言の書『日本の決意』『理想の日本人』から  

『理想の日本人』本文より抜粋  (中経出版刊)        

内村鑑三が「代表的日本人」を世に出してからちょうど100年。

いま新しい「日本人」を問う!

これから30年後の日本を創り、世界に貢献する日本人とは?

古今東西の多くの理想的人物から学びつつ、渾身の力で描いていく「日本人論」。

― 目次 ―

はじめに

序 章 | 今日の日本人の美質と弱点

■世界の中の日本の位置 ■平和を支えた地理的条件 ■日本人の徳質の原点 ■日本人の美質 ■これが日本人の弱点 ■足の引っ張り合い ■特殊な言語・日本語 ■信仰心に欠けるのか ■人間成長の条件 

1 | 世界に通用する理想の国民

■幸福のスパイラル ■めざせ! 条件のない愛 ■世界連邦をめざす精神 

■不動の信念 ■「利他」の神髄 ■日本人の進化の課題

第2章 | 新時代に適応する理想の日本人

■理想の日本人 ■「利他」が尺度 ■埋もらせるな未知の能力 ■「活私奉公」にカギ ■基本は武士道にあり ■「国のオーラ」を守る ■本質は「無条件の愛」 ■親孝行こそが源泉 ■「報徳思想」がモノをいう ■人間関係の潤滑油たれ

第3章 | これからの100年をつくる「理想の日本人」

■若者諸君へ ■他国がうらやむ日本の国の姿 ■過去を全肯定しないと未来は開けない

■発展のチャンスを秘める「海洋国家・日本」 ■有史以前からの平和愛好民族 

■もてる創造力をさらに磨こう ■地球愛のブーメラン現象 ■非凡は平凡の積み重ねから ■「学ばずんば卑し」こそ真理 ■至誠天に通じる ■人類はみなファミリー

 おわりに

         ◇              ◇

第2章 「新時代に適応する理想の日本人」本文より抜粋

                             (略)

  漠然と「理想の日本人」といっても、さまざまな受け止め方があります。私が選定の基準とした

のは、以下に述べる点です。

  第一は「精神的に高貴な人」です。人生への思考の貴賎を問います。

  第二は「向上心を生涯持ち続ける人」です。継続こそ力なりです。

  第三が「無私の行動をとれる人」です。無私ほど強きものはありません。

  第四は「勇の心を発揮できる人」です。真の勇者を見極めます。

  第五が「母国愛がにじみ出る人」です。真の包容力が目安です。

  第六は「慈悲・慈愛の心の篤い人」です。心の温かさを問います。

  第七が「父母の役割を実らせられる人」です。アップツーデートな課題です。

  第八は「篤実に人生を歩む人」です。にじみ出る人間味が尺度です。

  第九が「道を切り開く能力に溢れる人」です。難局に不可欠な要素です。

 

  傑出した人物は、一つの分野だけではなく、複数の分野ですぐれた実績を残しています。

              ◇              ◇

序章 今日の日本人の美質と弱点」本文より抜粋

 

 「絶対の善」もなければ、「絶対の悪」もありません。仏教では「変毒為薬」(毒を変じて薬となす)といいます。つまり、毒は薬に変わるのです。逆もまた真です。毒と薬は物事の両面・裏表なんですね。

 たとえば、「青カビ」から二十世紀の一大発明「ペニシリン」が生まれています。悪を善に、つまり反価値を正価値に変えればいいのです。それができるのが、人間に与えられた「英知」なのではないでしょうか。

 私の理想は、「戦争のない平和な地球」です。そのためには「世界連邦」の構築が不可決でしょう。巷には凶器になる銃一丁ない世界。治安のための警察は必要でしょうが、軍隊はいらない。そんな世界、そんな地球にしたいものです。

 そのためには、今、地球上で生活している人たち全員が「自己進化」を遂げなければなりません。「(かい)より始めよ」です。日本民族から全地球人類へ。そのような思いで、この本を上梓しました。

              ◇              ◇

 第3章 「これからの100年をつくる『理想の日本人』」本文より引用

 

  遺伝子学者・村上和雄はつぎのように言っています。

 「医学・生物学上で二〇世紀最大の発見は、DNAの構造の発見と、遺伝子の仕組みがわかったことである。その結果、カビも昆虫も、植物も動物も人間も、生きとし生けるものすべては、同じ遺伝子暗号を使っていることがわかった。このことは、相争っている人間も、自然環境の変化にさらされているすべての生物も、最初に生まれた命につながっている兄弟姉妹であることを意味している」(産経新聞「正論」=二〇〇七年二月二十七日付)

  百三十七億年前に「ビッグバン」があり、銀河系の地球が生まれたといわれています。そのときに産声を上げた最初の遺伝子が、さまざまな形に変化して、今日の人類に、あるいは動植物に引き継がれているわけです。

  だから、地球上の生命体は、すべて同根から発している、というわけです。つまり、遺伝子を共有しているということです。言い換えれば「生あるものはすべて親戚・兄弟」になるわけです。

  私はつねづね「世界連邦」による世界平和の実現を提唱してまいりました。その基本は「人類はみな共生ファミリー」の考え方です。この村上和雄の指摘、つまり「人間もすべての生物も最初に生まれた生命につながっている」は、私の「人類はみな共生ファミリー」の主張を科学論的に強力にバックアップする理論的な背景となるものと考えています。

 

 

『日本の決意』本文より抜粋  (ヒューマンアソシエイツ刊)  

もくじ

プロローグ ―― 今こそ吉田松陰の「草莽崛起(そうもうくつき)」に学べ

第一章 「美しい国」をつくる「美しい日本人」

――日本人の危機を救ってきた先人たちの知性と人格

第二章 救国の要「教育改革」を急げ

――「美しい日本人」はいかに育成されるか

第三章 真の「国家戦略」を問う

――信念に基づく強靭な「戦略」をもって世界に対峙せよ

第四章 日本の活路はどこにあるか

――「美しい国」づくりを強力サポートする

 

                       (略)

 いうまでもなく、人は、この世に生まれたこと自体が奇跡なのだ。

 しかも、その誕生はけっして偶然ではなく、どんな人も生まれるべくして生まれてきた。自分の命も他人の命も、そしてすべての生き物の命も、そんな厳粛で尊い命だということを、今一度、意識的に教えていく必要がある。

 命の大切さ。連綿とつづいてきた命のつながりのなかで今、生きているという奇跡。これは、本来ならば、「生命教育」などと名づけなくても、育つ過程で子どもが自然と身につけていく意識だ。

 しかし、子どもを虐待する親が後を絶たず、家庭教育まで崩壊しかけている今、学校教育で生命教育を徹底させることが、教育の最重要課題だろう。

 かけがえのない尊い命だということを知りさえすれば、命を粗末にしたり、物のように扱ったりすることなどできなくなるはずだ。

 他人の命はおろか、自分の命すら粗末にする子どものニュースがはいるたびに暗澹たる気持ちになるが、大人が諦めてはいけない。                                   

                    ○

 思えば、かつて人間は、自然のサイクルの中で生かされていた。人が死んで灰になれば土になり、バクテリアから小動物、大動物に至るまでの命を繋いだ。

 これを「供養被供養の原理」というが、日本に蔓延した拝金主義は、ついに、生命の尊厳を軽視するところまできたようだ。まことに心重いことである。

 東京の深川に住んでいた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、庶民の優しさや高い教養に驚嘆し、愛した。彼だけではなく、幕末から明治にかけて日本にやってきた外国の人々は、日本人の正直さ、高潔さに感動したものだ。

 その国が、忌々しき拝金主義の国になってしまった。

                     ○

 細胞同士は利他的に助け合っている。その細胞が集まってできている臓器同士も助け合っている。つまり、生物の身体は、このように助け合うことで生物としての形をなしているのである。

 こうした事実から、村上(和雄)氏は、世の中の弱肉強食一辺倒の論理に疑問を呈す。

 たしかに、助け合う利他的な遺伝子の存在に鑑みれば、強いものが弱い者を淘汰することで生き残ってきた、あるいは環境に適応できた強者だけが残ったという説に偏るのはおかしい。

 その証拠として、村上氏は、コンピュータを使ったある実験を挙げた。

 二つのグループをつくり、片方のグループを利己的なグループに、もう一つのグループを利他的にする。

 前者は、「自分の獲得したものは自分のもの」という考え方で生活を営んでいるが、後者は、何でも分け合う社会である。

 さて、この二つのグループのうち、どちらが生き残ったか。

 前者は、弱いものから順に消えて行き、残った者同士も激烈な争いを繰り広げ、次第に数を減らしていった。それにひきかえ後者は、全員が生き残った。

 利他的な生き方のほうが長生きするというのが、この実験の結論である。

                     ○

 日本経済を支えた最大のポイントは、日本が高度信頼社会だったことなのだ。

 ところが、最近、日本人の遺伝子がおかしくなっている。人を欺くことに恥じず、人が見ていないところで悪事を働くことを躊躇しない人が増えてきた。

 しかし、日本人は、神代の昔から、日本人らしい遺伝子を持ち続けているはずだ。私は、今は隠れているこれらの遺伝子をスイッチオンして、武士道にのっとった美学を取り戻したいと思うのである。    

                     ○

 縄文以来、アニミズム、仏教、儒教、神道、キリスト教と、さまざまな信仰を受け入れ、融合させてきた日本人は、生来、宗教に寛容なところがある。

 「共生」に基づく生命観、世界観は、動物や植物、石にいたるまで、すべてのもの、八百万のものに命が宿っていると考え、自然を崇拝する。その根底には、生命の尊厳を守る心がある。

 信仰にかぎらず、日本は東洋や西洋の多様な文化までも同化、吸収してきた。

 その優れた能力を遺憾なく発揮すれば、日本人は世界平和の旗手になれるのではないか。

 

 

  これらの抜粋や目次だけでは、濤川塾長の本意をくみ取って頂けないかもしれません。ぜひ本書をお読み頂き、日本のとるべき進路の指針として参考にして頂けましたら幸甚です。

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